(C) Mizuno Enry  女王様と犬
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恋をした。
たぶんそれは、ほんの些細な出来事が発端の、突発的な事故であって、行き当たりばったりな想いなのだろう。
そう…、それはただの心の勘違い。






『甘いチョコ』






チョロチョロと流れる小川のせせらぎ。
静寂と水音の合間をぬって、気合の入った少女の声が森に響く。
乱れた呼吸を整え、身体の重心を低くとった独特の構えから、しなやかに手技を繰りだす。
壱の型…弐の型……参、四、五……。
いつ終わるともしれない演舞に、ハナビの身体は、魅入られたように熱中していた。

「おい、ハナビ!」

ぶっきら棒な少年の声が、演習場でひとり修行に励んでいるハナビを呼ぶ。
けれどハナビは、柔拳の型のおさらいに集中していて、遠巻きに声をかけてきた人影を気にする様子もない。

「……ったく。聞こえてるのに、放置かよォ」

少年は、不貞腐れたようにボヤクと、ハナビに近づくでもなくその場にしゃがみ込んだ。
ハナビがちらりと視線を投げると、遠目にもイジケきった少年の姿が見える。

「クス……」

情けない顔で、こちらを眺めている少年の表情を見て取り、ハナビの唇に思わず笑みが零れた。
少年が執拗に話しかけても、気分が乗らない時のハナビは、決して自分の修行の邪魔はさせなかった。
要するに、無視を決め込むのである。
出逢ってからもう三年。
聞き慣れたはずの犬塚キバの声は、月日を重ねる毎に、少年の声から少しずつ低く、大人びたソレに変わっていた。

「しょうがないなぁ……あと少し修行したかったんだけど…」

ハナビは、小さな声で呟くと、汗ばんで乱れた黒髪を無造作にかき上げた。
三年の月日は、キバだけではない…ハナビの身体にも、多大な影響を及ぼしていた。
七つだった幼女は、もう大人びた十歳の少女に成長していた。
ハナビの背は、今ではすんなりと伸び、愛らしかった頬の丸みも、柔らかい少女の肌艶を匂わせている。
キバとて、十二歳の頃から比べると、段違いに背が伸びている。
少年特有の細かった身体も、しっかり鍛えられ、忍びに必要とされる敏捷性重視のしなやかな筋肉を身に付けていた。

「キバ! いつまでそんなトコにいるの? ハナビに用があってきたのでしょう?」

ハナビは、尊大な口調でキバを振り返った。
乱れた呼吸をゆっくり整えながら、服についた土埃を手早く払う。
汗で湿った服が、肌に張り付いて気持ち悪かったが、着替える時間はなさそうだった。
グズグズしているキバに向かって歩き出したハナビは、木陰から漏れる陽射しの眩しさに眼を細めた。
修行で火照った頬を、さらりと春の風が撫でていく。
よく晴れた日だった。

「…用がなきゃ、ココにきちゃいけねーのかよ」

ほったらかしにされた事を根に持っているのか、キバの拗ねた声が返ってくる。
軽やかな足取りで歩み寄ったハナビは、キバの目前で悠然と立ち止まった。

「用がなければ何? ハナビが修業している時は、声をかけても無駄だって、もうとっくに学習したでしょう?」

キバを見下ろしながら、呆れたように肩を竦めてみせると、キバはブツブツ文句を言いながらも、素直に立ち上がった。
 
「学習って…ひっでえ言い方。ハイハイ、知ってますよー。ハナビちゃんが、修行熱心なのは……チェッ」

しゃがんでいたキバが立ち上がると、途端に立場が逆転する。
今のキバの身長は、ハナビよりも頭ひとつ半ほど背が高い。
ハナビも三年の間でかなり背が伸びた方だったが、二人並んでみると、ハナビの目線は、ちょうどキバの胸の辺りだった。

「赤丸は一緒じゃないの? キバが一人で出歩くなんて珍しいね…」

ハナビは、小首を傾げてキバを見上げた。
赤丸が定位置にしている上着の胸元や、フードを被ったキバの頭上にも見当たらない。
常にキバとワンセットの忍犬の姿がないのを、不思議に思ったのだ。

「あ〜赤丸? 今日は別行動。なんか彼女が出来たとかなんとかでさ…まあ、春だからな」

ぼやくキバの横顔は、愛犬に彼女が出来てしまって、どこか詰まらなそうな…寂しそうな風情である。

「自分の忍犬に、先越されたんだ?」

追い討ちをかけるような言葉をサラリと言うと、ハナビは、人の悪い笑みを口元に浮かべた。
グサリと図星を指されたキバは、嫌そうに顔を歪ませる。

「しゃーねーだろ。人間よりも、犬のが成熟するのが早ぇーんだよ」

負け惜しみのような反論を返したキバは、クスクスと笑うハナビに、ようやくからかわれた事に気づいた。

「お前な〜年上の男をからかうなよな」

キバは、情けない顔でガックリと肩を落した。
青年と呼ぶにはまだ少し年が足りない少年は、自分よりさらに五つ年下の少女に、何故かしら弱かった。

「だって、キバってば、ちっとも変わらないんだもん」

クスクス笑ったハナビは、可愛らしい仕草でペロリと舌をだしてみせた。



* * * * *



ハナビとキバの出逢いは、至極単純なものだった。
キバは、姉のヒナタが、下忍になった時の仲間のひとり。
一緒のスリーマンセルを組んでいたせいか、よく日向の屋敷へも遊びにきていた。
人見知りしない明け透けな性格の持ち主は、日向宗家の娘にも、遠慮なく声をかけ、粗野な言動からは一見して想像しづらい、面倒見のよい一面を発揮していた。
他人との接触に尻込みがちだった内気なヒナタを、わざわざ家まで迎えにきたり、演習で怪我をした時はおぶって連れ帰ってくれたりと、仲間と言うよりも、まるでヒナタ専属の保護者のような世話の焼きぶりだった。
当初、キバがあまりにもヒナタを構うので、ハナビは姉狙いの害虫かと思ったほどである。
自分でも、少々シスコンの気があるのを承知しているハナビは、キバを『敵』と認識して、あれこれとチョッカイをかけては、嗅覚の鋭いキバと赤丸に発見されて悔しがったものだ。
ハナビの拙い嫌がらせを面白がったキバは、日向の屋敷に来るたびに、幼い少女の新たな作戦に乗った振りをしてハナビを構った。
そのせいか、日向の敷地内から滅多に出る事のないハナビとも、自然と話すようになっていたのである。

「それで? ハナビに何の用なの? 顔を見に来ただけなんて事はないのでしょう?」

ハナビにも、キバが、忙しい任務の合間をぬって逢いにきたのは分かっている。

「一々言う事が、可愛くね〜な。…まあいい。ハナビにコレやるよ」

キバは、不貞腐れていた気持ちを素早く切り替えて、奇麗に包装された箱をポケットの中から取り出した。
ズイッと無造作に差し出された箱を、ハナビは怪訝な面持ちで受け取る。

「……」
「…………」

沈黙する二人をからかうように、ビュウウと音をたてて演習場に突風が吹き荒れた。
春一番の嵐の予感。



* * * * *



「何これ……もしかしてバレンタインデーのチョコ? キバが、ハナビにくれるの!!?」

意外な展開に意表をつかれたハナビは、驚いて目を丸くした。
キバへ確認する声が、ほんの少しだけ上擦る。
そういえば、今日は二月十四日。
好きな人にチョコレートを贈って告白する乙女の祝日 バレンタインデーだった。

「ちげーよ、バカ! 俺が大量に貰ったから、食い切れねー分をやるってだけだ」

告白シーンに突入かと思いきや、なんの事はないバレンタインデーの戦利品のお裾分けという。

「ふぅ〜ん。キバって、意外とモテるんだ?」

慌てて否定するキバに、ハナビは内心面白くない気分にさせられた。
考え込むように、スウッとハナビの眼が細まる。

「オウ! そこそこイケル方だぞ……ま、義理も多いけどよ」

貰ったチョコの数を誇るかのようなキバの発言に、ハナビはますます面白くなかった。

「そういえば…今年も、姉上から貰ったの? その…義理チョコを」

探るようなハナビの視線に気が付いていないのか、キバは、暢気に笑って手を振った。

「あ〜〜ヒナタ? うんにゃ、今年は俺の分いらないって、言っといたからな〜本命にでもやってるんじゃないのか?」

あいつ等いつまで経っても進展無しだかんな〜と、冷やかすようにゲラゲラ笑っている。
ヒナタの奥手など、今更の事である。
以前は、本命にあげるチョコもキバ達スリーマンセルの仲間にあげる義理チョコも、同じモノを渡していたぐらいである。
それでは誰が本命なのか、想われている当人に判るはずもなく…結果、未だにお互いの気持ちを知らずにいるのである。

「そう……で、どうしてハナビにチョコをくれる気になったの?」

ハナビは、きゅっと唇の端を持ち上げて、含みのある笑みを浮かべた。

「だってお前、昔っから甘いもん好きだろ?」

それ以外に何があるんだ? といわんばかりに、キョトンとした顔でハナビを見ている。
甘い菓子をやればハナビが喜ぶと、心底信じて疑っていないようだ。
完全に子供扱いである。
七歳の時からハナビを知っているだけに、一人前の女性として扱えという方が無理な相談なのかもしれない。

「もうっ…またハナビを子供扱いする……」

ハナビは、悔しそうに舌打ちした。
野生の勘と嗅覚は鋭いくせに、そっち方面にはとんと鈍いから可愛くない。
いつまでも子供扱いするキバのペースに合わせているのも癪に障った。
不意に妙案を思いついたハナビは、キラリと瞳を輝かせる。

「ねえ、キバ……ハナビ汗臭い?」

ハナビの唐突な質問に、キバが「ハァ?」と素っ頓狂な声で返事をする。

「な、なんだよハナビ…」
「いいから、答えて! さっきまで動いていたから、ハナビ汗かいてるでしょ?」

ハナビの命令口調はいつもの事だが、ニッコリと極上の笑みを浮かべ、キバに向ける瞳が活き活きとしている。
こういう表情をする時のハナビは、ある意味、キバにとって危険信号であった。

「別に、修行してたんだから、汗かいて当たり前だろ?」

キバは、全くハナビの意図が読めずに、怪訝そうな面持ちで律儀に答えた。
年上とはいえ、キバも存外素直な性分である。
キバに向かって、ニッコリと笑うと、ハナビは徐に爆弾発言を投下した。

「じゃ、ちょっと水浴びするから、側で見張っていてよ」

汗をかいて気持ちが悪かったし、キバの度肝を抜くには、これぐらいしても丁度いいぐらいだ……心の中で、そうひとりごちたハナビは、茂みの影に隠れていた川原へ向かって歩き出した。

「……はあ!!!? って、おい! ハナビ!!? 何、服を脱ぎ出してるんだよ!!」

焦りまくったキバに、ハナビはチロリと舌をだす。

「だって、汗かいて気持ちが悪いんだもん」

そう言い切ったハナビは、汗で湿った上着を勢いよく脱ぎ捨てる。
キバの目の前で、ハナビは無邪気にその白い肌を晒す。
目を逸らすタイミングを逸したキバは、ハナビの裸体に視線を釘付けにした。
キバの視線を背後に感じながら、ハナビは女としての満足感をしばし味わう。

「バカ! さっさと服着ろ!」

真っ赤な顔になったキバが、焦った声で怒鳴る。
いつまでも子供だと思っていた少女の裸体に、興奮してしまった事を恥じて、ブルンと勢いよく首を振った。
往生際の悪い…意地の悪い楽しみを発見したハナビは、下の服も潔く脱いで足元にスルリと落とした。

「だって、子供には興味ないんでしょう? だったら、ハナビが目の前で水浴びしていても、構わないじゃない」

ハナビは、キバの目の前で、その滑らかな肢体を見せ付けるように軽く伸びをした。
小さな川の流れに、そっと右足を伸ばしてひたす。

「ん〜まだ冷たいかな?」

ブルリと身体を震わせながら、勢いをつけて腰まで水に入る。

「キバも一緒に入る?」

ハナビは、悪戯っぽい表情で、クルリとキバを振り返った。
胸元まで伸びた黒髪が、サラリと少女の白い肌を隠す。
華奢な身体だった。
女性らしいまろやかな肉体には、まだ物足りない未成熟な少女の肢体。
けれど、固い花の蕾を連想させる不思議な色香を纏っていた。

「……誘ってるのかよ…ハナビ」

キバの上擦ったオスの声が、ハナビの名前を呼ぶ。

「だったら…どうする?」

ハナビが、男を誘惑する小悪魔のように微笑む。
いつもの悪い癖だ…キバは、日頃から仲間内に「軽い」と言われがちな自制心を総動員して、自分に言い聞かせる。
子供扱いされて怒ったハナビの挑発だという事は分かっていた。

「…キバ?」

下半身を水に浸したままのハナビが、甘い声でキバを呼ぶ。
その瞬間、あっけなく男の本能が、年上としてのプライドと理性を上回った。
ザバザバと激しい音をたてて川に入ってきたキバは、怒ったようにハナビを見た。
キバは、ぎこちない動作で手を伸ばす。
女の扱い方など、そこいらのエロ雑誌で仕入れた知識程度しか知らない。
触れたら壊れてしまいそうな華奢な身体。
滑らかな色艶をした少女の肌を、ただ力任せに握った。

「イタッ!」

反射的に叫んだハナビが、痛みに顔を顰める。

「…胸、強く触ると痛いよ」

ハナビは、非難まじりに呟くと、うっすらと涙が滲んだ瞳で、乱暴な手つきで握られた自分の胸を見下ろす。
まだ膨らみ始めて間もない成長途中の胸は、固くしこっていて、女性の柔らかさのほんの輪郭しかない。

「あ、悪い……」

短い言葉で謝りつつ、キバはハナビの胸を触るのをやめない。
キバのざらついた指先が、熱心に撫で回す様を、ハナビは息をとめて見つめた。

「ハナビの胸、ちっちゃいでしょ…。キバもやっぱり姉上みたいなおっきい胸が好きなの?」
「ん? まあ…でっかければ、触り心地もいいんだろうけどな…」

かすれた声で語尾を濁しながら、キバは、白い胸の上で色づく頂きを指で転がした。
ハナビは、くすぐったそうに身をくねらせる。

「なんか…変な感じ…くすぐったい」

ハナビの反応を面白がるように、キバの手が、少しずつ下に伸ばされていく。
水面ギリギリに浮かぶ小ぶりの尻を、すうっと掠るように撫でた。

「ハナビは、胸が大きい方がいいな……、キバが揉んで大きくして」

当面のハナビの目標は、ヒナタぐらいの胸に成長する事なので、しっかりと希望を述べる。

「下の毛もまだ生えてないくせに、何言ってるんだよ……」

キバが、呆れたように苦笑する。
下着を脱いだ時は、キバへ背を向けていたはずなのに、いつの間に下半身も見られていたのだろう。
ハナビは、図星を指されて思わずムッとする。

「……そんな子供の裸に興奮してるのは、どこのどいつよ」

膨れたハナビは、仕返しとばかりに、キバの股間をズボンの上からギュッと握りしめた。

「って! バカやろ! 大事なトコ握んじゃねって…イデデ」

勢いよく握ったハナビの握力に、玉まで潰されそうになったキバが叫ぶ。

「え? そんなに痛いの? 男の人の急所って…」

ハナビは、心底驚いたように手を離す。
キバの「大事なトコ」は、思った以上に大きく、固く…そして熱かった。

「……ハナビ! アカデミーで習っただろ。男の急所は、マジで急所だって……」

涙目になったキバが、うんざりしたようにハナビを叱る。

「うん。ごめんなさい」

キバがこんなに痛がるなんて…ハナビは、愁傷に肩をすくめて謝った。
下半身を庇うように、前かがみになって痛みの余韻と戦っているのには驚いた。

「擦って…あげようか? その…強く握らなければ、いいんだよね?」

自分が元凶ではあったのだが、キバが可哀想になったハナビは、オズオズと救助の手を申し出る。

「あのな〜これ以上はマズイって、俺だって男だぞ? 我慢できなくなるって…」

今度こそ呆れた顔になったキバが、盛大に溜息を吐いた。
どうにかこうにか下半身の大事なトコの痛みが引いたキバは、ガシガシと頭をかきながら、ハナビの手をひいて浅瀬の川から出た。
無言で木陰まで行くと、ズボンの裾が濡れたままなのも気にせずに、ドスンと地面に腰を下ろす。
つられてハナビも、素肌のままペタリと地面にお尻をつける。

「………ダメ?」

潤んだ瞳で見上げると、キバが咽喉の奥で唸った。
ハナビが、甘えるように身を摺り寄せると、キバの腕が力強く抱き寄せ、簡単に身体を組み敷かれた。

「修行熱心なハナビちゃんは、どこまでやりたいんだよ」

鼻がくっつきそうなほど間近に顔を寄せ、キバが皮肉っぽく溜息を吐いた。

「キバが、ハナビを子供扱いしなくなるまで!」

キッパリと自己主張する。
不満気に唸っているキバに、ハナビは甘えるように互いの鼻をこすりつけた。

「女として扱えってか? でも、お前…まだ初潮もきてねーじゃんか」

ボソリと、妙な確信を持ってキバが呟く。

「……なんで知ってるの?」

ハナビの表情がヒクリと強張る。
十歳ならば、一足早く成熟した少女がいても可笑しくない年頃だ。
ハナビの知る同年代の何割かは初潮を迎え、もう一人前の女として扱われていた。
けれど、ハナビはまだその兆候の赤い血の印しは現れていない。

「匂いで分かるよ」

嗅覚が犬並みの犬塚一族ならではの台詞である。

「ムウ……スケベ」

生理期間中の女性が分かるのかな?…と思い至ったハナビは、いずれは自分も当てはまる事実に、頬を染めた。
追跡任務には重宝する能力だけれど、鼻がいいのも問題だ。
ハナビは、プクリと頬を膨らませたまま、それ以上の行為に手を出し渋るキバを睨んだ。

「…じゃあ、大人になったら、一緒にお祝いしてくれる?」
「ああ?」

眉間にシワを寄せて唸っていたキバは、ハナビの発言に間の抜けた返事を返した。

「キバが、ハナビを女にして…」

内気で控えめな姉とは大違いなこの大胆な少女に、キバは、あっけなく降参した。

「…………。あ〜〜もう、お前には勝てんわ。マジで……」

ガックリと脱力した拍子に、キバの上体がハナビの肌に密着する。

「クスクス…いいじゃない。ハナビを手に入れるんだから」

地面に組み敷いた少女の身体を見下ろし、キバもつられて「そりゃそーだ」と笑った。

「来年は、ハナビがチョコをあげるね」

ハナビは、嬉しくてゴロゴロと喉を鳴らす猫のように、キバの前で安心しきった無防備な姿を晒す。

「オッ? 何、ハナビの手作りチョコか?」

年上の男としての威厳もなにもなく、キバは、単純に眼を輝かせて喜んだ。

「…だから、もう他の人から義理でもチョコを貰わないように! 本命チョコなんか貰って鼻の下伸ばしていたら、もっと許さないからね」

ハナビが、しっかりと釘を刺す。
そんな可愛い少女のヤキモチを、キバは、しまりのないニヤケ顔で、了解したのだった。

「いいよ。お前がくれるんだったら、他はいらねーもん」

心配ならツバつけといてやるよ…と苦笑しながらキバは、ハナビの鼻のてっぺんにキスをした。

「……また子供扱いする。いつまでも甘やかせばいいと思って……。来年ハナビのあげるチョコは、甘くないかもよ?」

ハナビは、キバの唇が触れた部分を指で押さえながら、小声で文句をつけたのだった。










* * * * *



そんなハナビとキバのお話。
甘いですかね?
むしろ、エロ描写が甘すぎヌルすぎですかね?
まあ、三年経ったとはいえ、ハナビたんまだお子ちゃま設定なので、コレくらいがいいかにゃ〜なんて(ゴニョゴニョ)
…行為の途中までが、エロイと思う水乃さんであります。
つか、描写に力が入りすぎて、長くなりそうだったので(もう十分長いが)濡れ場は、ほどよくカットの方向で!
は〜しかし、やっちゃったよ。
エロっていう程のレベルじゃないが、こんな脳内妄想を公開するのは恥ずかしいでやんす。
しかし、キバとハナビは、意外と書きやすいカプであります。
サスケ奪還の折に、自害しかけたキバの忍びらしい潔さに、私の中で想像していたハナビの気性と似通った匂いを感じました。
己が、道具である事を知っており、戦いにおいて、必要であれば自らの死を賭けて、敵を仕留め、任務を遂行しようとする。
そんなシリアスチック一面に、妄想していたハナビの性格と共有できる価値観を感じました。
あくまでも、想像のカップリングですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
お粗末様でした(ぺこり)

水乃 えんり 拝